「リモートでは人を育てにくい」は本当?在宅秘書との関係を深める仕事の任せ方

「スタッフを採用したら、まずは会社のことを知ってもらう。そして、仕事に慣れてきたら、少しずつ任せる仕事を増やしていく」
これは、多くの企業にとってごく自然な人材育成のイメージではないでしょうか。

その一方で、こんな疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。
「それって、毎日同じ職場で顔を合わせているからできることなのでは?」

確かに、出社して一緒に仕事をしていれば、ちょっとした会話から相手の様子を知ることができます。
仕事の進め方を横で見たり、何気ないタイミングで新しい仕事を頼んだりすることもできます。

では、リモートで働く在宅秘書には、そうした「人材を育てていく」という関わり方はできないのでしょうか。

長年、リモートワークを活用した人材支援に携わってきた当社の経験からすると、決してそんなことはありません。

もちろん、対面で仕事をする場合とは異なる工夫が必要です。
しかし、仕事の依頼の仕方やコミュニケーションを少し意識することで、在宅のスタッフにも会社のことを知ってもらい、仕事をしながら経験を積んで、徐々に任せる仕事の幅を広げていくことは十分可能です。

今回は、当社がこれまで多くの企業と在宅秘書さんの関係を見てきた中で感じている、「リモートでも人材を育てていくためのポイント」をご紹介します。

最初は「会社を知ってもらう」ことから

在宅スタッフに業務を依頼するとき、最初から「この業務をお願いします」と仕事内容だけを伝えてしまうケースは少なくありません。

もちろん、仕事をお願いする以上、具体的な業務内容を伝えることは不可欠です。
ただ、継続的に仕事をしてもらうのであれば、それだけでは少しもったいないかもしれません。

当社では、例えば

「今、この事業に力を入れています」
「この仕事は、こういう理由で大切にしています」
「社内ではこういう考え方をしています」
「今後はこんなことをやっていきたいと思っています」

といった会社の背景や方向性も、在宅秘書へできる範囲で共有していただくことをお勧めしています。

オフィスで働いていれば、こうした情報は会話や周囲の様子から自然に伝わっていくことがあります。
しかし、リモートでは、意識して伝えなければ分からないことが多くあります。
そのため、企業側から「会社のことを知ってもらう」ための情報を少しずつ渡していくことが大切なのです。

離れた環境であっても、会社への理解が深まっていれば、仕事を依頼するときにも「何をしてほしいか」だけではなく、「なぜこの仕事をするのか」まで理解したうえで取り組んでもらえるようになります。

これは、長く仕事をしてもらううえで大きな違いになります。

「できる仕事」から始めて、少しずつ広げていく

「せっかく人材を確保したのだから、在宅秘書に可能な限りの仕事を手伝ってもらいたい」という期待感ゆえに、あれこれと一気に任せようとする企業様を時折見かけます。
しかし、むしろ最初は、お互いに仕事の進め方を確認しながら、無理のない範囲から段階的にスタートする方が、結果的にはスムーズに業務を任せていくことができます。

例えば、最初はスケジュール管理やメール対応、資料作成などをお願いしていたとしても、仕事を続けるうちに、

「この人は文章を書くのが得意だな」
「細かいデータ整理が得意だな」
「この分野に興味を持っているな」

といったことが分かってきます。

そこで、これまでお願いしていなかった仕事を少しずつ任せてみる。
これが、在宅秘書を「育てていく」ということにつながります。

  • 資料作成をお願いしていた人に、次は資料の構成を考えてもらう
  • 事務作業をお願いしていた人に、業務の効率化についてアイデアを出してもらう
  • 文章作成が得意な人に、社内文書やブログ記事の下書きをお願いする

このように、「できることをお願いする」から「できることを増やしていく」へと、少しずつ仕事のステージを変えていくのです。

もちろん、本人の希望や適性を確認しながら進める必要があります。
しかし、継続的に同じ会社の仕事を担当してもらう在宅秘書であれば、こうした仕事の広げ方ができます。

「やってみたい」を聞いてみる

在宅秘書の仕事の幅を広げるときに、企業側から秘書さんへぜひ聞いていただきたいのが、「やってみたいこと」です。

以前、当社に寄せられた在宅秘書さんから、こんな言葉がありました。
「できることだけでなく、やりたいことを任せてもらえることが嬉しい」

これまで経験してきた仕事を続けることは、もちろん安心感があります。
一方で、長く同じ仕事をしていると、「もっと違うことにも挑戦してみたい」と思うようになることもあります。

「何かやってみたい仕事はありますか?」
「以前から興味を持っていることはありますか?」
と定期的に聞いてみるのが有効です。

すぐに任せられる仕事がなくても、「そういうことに興味があるんですね」と知っておくだけで、今後仕事をお願いするときの選択肢が増えます。

これは、企業にとってもメリットがあります。

一緒に仕事をする期間が長くなればなるほど、その人の得意分野や興味を把握できるようになり、「この仕事はこの人に任せてみよう」と判断しやすくなるからです。

リモートだからこそ「意識して話す」

ここまで読んで、「でも、やっぱり出社している人のほうが、仕事ぶりも分かるし、育てやすいのでは?」と思われるかもしれません。

確かに、リモートには「偶然のコミュニケーション」が少ないという特徴があります。
オフィスなら、席の近くを通ったときに「そういえば、この仕事なんだけど・・・」と話しかけることができます。
ちょっとした雑談から、相手が困っていることに気づくこともあります。

リモートでは、こうした機会は自然には生まれにくいものです。

だからこそ、「必要なコミュニケーションを意識してつくる」ことが重要になります。

例えば

  • 毎日のチャットで一言声をかける
  • 定期的に仕事の状況を確認する
  • 何か仕事を依頼するときに、その背景を簡単に説明する
  • 仕事が終わったときには「助かりました」と伝える

これだけでも、かなり違います。

実際、当社に寄せられた在宅秘書さんからは、
「毎日予定を報告すると、上司が必ず『今日もよろしくお願いします!』と返信してくれる。それがとても嬉しい」
という声がありました。

企業側にとっては、「そんなことで?」と思ってしまいそうなほど、ほんの数秒でできる返信かもしれません。

しかし、リモートで働く側にとっては、「自分もこの会社の一員として仕事をしている」「仲間として認められている」という安心感につながる大切なコミュニケーションになります。

定期的に「今の仕事」を一緒に見直す

もう一つ、リモートで人材を育てていくうえで重要なのが、仕事を「任せっぱなし」にしないことです。

一度仕事をお願いして、問題なくできているからと、そのまま何年も同じ仕事だけを続けてもらう。
これでは、せっかく継続的に関わっている意味が十分に生かされません。

数か月に一度でも、

「今の仕事量はどうですか?」
「やりにくいことはありませんか?」
「もっとこうしたほうがよいと思うことはありますか?」
「今後、やってみたい仕事はありますか?」

と確認することが不可欠です。
それにより、企業側が気づいていなかった改善点が見つかることもありますし、秘書さんから「もう少しこういう仕事もやってみたい」といった話が出てくることもあります。

また、会社の状況が変われば、必要となる仕事も変わります。

  • 新しい事業を始めた
  • 社員が増えた
  • これまで社内でやっていた業務を外部に任せたい
  • 業務の進め方を効率化したい

こうした変化があったときに、会社に継続して関わり、過去の経緯や事情を把握している在宅秘書に相談できることは、大きなメリットです。

「業務を依頼する相手」から「会社を理解している人材」へ

在宅秘書を活用するメリットは、単に人手を補えることだけではありません。
継続して同じ会社の仕事を担当してもらうことで、少しずつ会社への理解が深まっていきます。

「この会社では、この資料を作るときにはここを重視する」
「この取引先には、こういう対応をする」
「社長はこういうことを大切にしている」
「この業務は、実はこのタイミングで確認しておいたほうがいい」

このような言語化の難しいニュアンスは、マニュアルだけではなかなか伝わりません。実際に仕事を経験しながら、少しずつ身につけていくものです。
そうした意味で、長期的に関わってもらうことには価値があります。

最初は「この作業をお願いできますか?」という関係だったものが、時間が経つにつれて「これなら任せられる」「このことも相談してみよう」という関係に変わっていく。
その結果、企業にとっては、会社のことをよく理解している頼れる人材が一人増えることになります。

実際、そのようにして、社長の右腕として活躍している在宅秘書が、当社には多く存在しています。

リモートでも「育てる」ことはできる

人材育成というと、「近くで仕事を見ながら教える」というイメージを持つ方も多いと思います。
そのため、「在宅で働く人を育てるのは難しい」「リモートでは仕事の幅を広げてもらうのが難しい」と考えてしまうのも無理はありません。

しかし、長年リモートワークによる人材支援に携わってきた当社が見てきたのは、必ずしもそうではないということです。

リモートでは、対面とは違った工夫が必要です。

  • 会社の情報を意識して伝える
  • 仕事の背景まで説明する
  • 定期的に状況を確認する
  • できるようになった仕事があれば、次の仕事を任せてみる
  • 本人の「やってみたい」に耳を傾ける
  • 日々のちょっとしたコミュニケーションを大切にする

こうしたことを積み重ねていけば、毎日顔を合わせていなくても、仕事を通じて相手を知り、会社への理解を深めてもらい、少しずつ仕事の幅を広げていくことは可能です。

見えない相手でも、近くで見ているかのように意識し、企業側が「伝える」「確認する」「任せる」を心がけることで、より丁寧に関係を築いていくことができます。

在宅秘書を「育てていける人材」として考える

当社は、人手不足の解消を考えるとき、「今ある仕事を誰にお願いするか」だけでなく、「これから長く関わってもらえる人材をどうつくっていくか」という視点を持つことが大切と考えています。

在宅秘書は、必要な業務を一度だけ依頼して終わるサービスとは異なり、1社と直接契約を結び、継続して業務を担当します。

そのため、最初は限られた仕事からスタートしても、会社を知ってもらい、仕事に慣れてもらい、少しずつ任せる範囲を広げていくことができます。
そして、その過程で企業側も「この人にはこんなことができる」「こんな仕事を任せてみたい」と新たな可能性を見つけていくことができます。

「在宅だから、人材を育てることは難しい」ではなく、「在宅だからこそ、お互いの意識次第で、むしろ関係性の深い人材を育てていくことができる」。
これは、リモートワークを長く提唱してきた当社が、企業と在宅秘書さんの関係を見てきた中で感じていることです。

目の前の業務をお願いするだけではなく、その人が会社を知り、できることを増やし、より幅広い仕事を任せられるようになっていく。
そんな長期的な視点で在宅秘書を活用することができれば、人手不足への対応だけでなく、将来にわたって頼れる人材を確保することにもつながっていくのではないでしょうか。