在宅秘書は、特定の企業のもと「自社スタッフの一員」という立場で業務に従事する働き方です。
長期的、また横断的にさまざまな業務を担当するため、長くキャリアを積んだ秘書さんの中には、契約時の報酬からアップするケースも多くあります。
具体的には、企業側から報酬アップを切り出されることもあれば、秘書さん自身が昇給交渉を行うことも。
ただ、秘書さんの多くは、過去にそのような交渉経験がなく、「報酬アップの交渉って、どう切り出せばいいの?」と悩みを持つことも多いようです。
そこでこの記事では、現役の在宅秘書へ実施したアンケート結果から見えたリアルな傾向をもとに、在宅ワークにおいて報酬交渉をする際に意識したい「タイミング」「準備」「伝え方」「避けたい行動」について解説します。
アンケート結果から見えた「昇給交渉の現状」
「なかなか言いづらい・・・」交渉未経験者の声
現役の在宅秘書さんからは、下のような声が聞かれました。
- 何年働いたら交渉していいのか分からない
- 自分の働きが報酬に見合っているか自信がない
- 上手な報酬交渉のやり方が分からない
- 交渉がきっかけで業務量が変化するのでは…という不安
- 単純に「言いづらい」「断られるのが怖い」
「知りたいけれど、他の人には聞きづらい」
「交渉の経験談を知りたい」
という声も多数寄せられ、昇給交渉は秘書さんにとって非常にハードルの高いテーマであることが分かりました。
昇給につながった人の共通点
一方、昇給を経験した方の共通点は下のとおりです。
- 勤続年数が2〜3年以上
- 担当業務の幅が広がっている
- 自分から行動を起こした(または上司が気づいてくれた)
- 実績を踏まえた上で話をしている
「できることは何でもやる、できないことはできるようにする」
「自分がいなくなると会社が困る存在になった」
といった信頼や貢献度が、交渉の後押しになっていたことがうかがえます。
成功しやすい昇給交渉のコツ
交渉しやすい“タイミング”とは?
昇給交渉には、適切なタイミングがあります。次のような局面では、話を切り出しやすくなります。
① 勤続年数が2年以上経ったとき
一定期間、継続して業務に携わることで、信頼関係も築かれ、交渉の土台ができてきます。
② 担当業務の幅や責任が増えたとき
明らかに業務量が増えていたり、新しい業務に対応している場合は、「報酬も見直していただけませんか」と話す理由になります。
③ 契約更新や年度替わりなどの区切り
業務内容や条件の見直しが発生しやすい時期は、自然な流れで報酬についても話題に出せます。
④ 評価やフィードバックをもらった直後
ポジティブな言葉をもらったタイミングを活かすと、交渉がポジティブなトーンで始めやすくなります。
前もって準備しておくべきこと
報酬の話は、「なんとなく」では通りません。納得してもらうには、しっかりと準備することが重要です。
自分の実績を整理する
- 担当業務の範囲と変化
- 改善提案やマニュアル作成など、自分が貢献したこと
- 企業にどんなプラスが生まれたか(業務効率化、信頼性向上など)
数字や成果として説明できるようにしておくと、説得力が増します。
報酬アップを希望する理由を明確に
「生活が大変だから」ではなく、「今後もより良いサポートを続けていくために」といった、前向きな姿勢を示すようにしましょう。
今後どのように貢献できるかを考える
- 今後習得したいスキル
- 担当業務の幅を広げる意欲
- 中長期的にどう企業に貢献していきたいか
報酬だけでなく、これからの成長意欲を伝えると、企業側も前向きに検討しやすくなります。
伝え方の工夫で印象が変わる
報酬交渉の際は、できる限り「直接対話」で行うことをおすすめします。
メールやチャットなどのテキストでは温度感や誠意が伝わりにくく、誤解を生むこともあります。
対話であれば、表情や声のトーンから、自分の想いや相手への敬意をしっかり届けることができます。
まずは対話の場をお願いする
いきなり本題に入るのではなく、まずはチャット等の場で、簡潔な文章で対話の機会をお願いするのがスマートです。
【例文】
「いつもありがとうございます。
〇〇の件でご相談したいことがあり、お時間を少し頂戴できないでしょうか?」
これにより、「ちゃんとした話があるのだな」と相手に心づもりをしてもらえます。
対話では、誠意と準備が伝わる話し方を意識
口頭で伝える際は、次の3つの要素を意識しておくと、話がスムーズになります。
- 感謝から始める
「いつも業務を任せていただき、ありがとうございます」といった一言が、印象を和らげます。 - 実績や業務内容の変化を簡潔に伝える
「最近は〇〇業務も対応させていただいており…」
「以前より対応できる範囲も広がってきたと感じています」
など、できるようになったこと・任されていることの変化を、事実として簡潔に話しましょう。 - 前向きな理由と今後の意欲を伝える
「長く貢献していくためにも、現在の業務と報酬のバランスについて一度ご相談できればと思っておりまして…」
「〇〇に向けてもっと貢献していきたいと思っているので、その点を踏まえて一度ご検討いただけたら幸いです」
と、あくまで「提案」として伝えることで、相手も構えずに話を受け止めてくれる可能性が高くなります。
テキストで伝える場合も、補足や事前共有にとどめる
どうしても口頭で話せない場合でも、テキストはあくまで「導入」や「補足」にとどめましょう。
文章だけですべてを伝えるのではなく、「一度お話の機会をいただけませんか?」とお願いする使い方がベターです。
いきなり金額を提示するのではなく、背景や想いを丁寧に伝えることを意識しましょう。
やってはいけない昇給交渉のNG例
× 感情的に訴える
「生活が苦しいので上げてください」といった表現は、相手にとってはプレッシャーになりやすく、業務との関連性が薄いと捉えられがちです。
× 他の人と比較する
「〇〇さんより頑張っているのに…」という私情を感じさせるような比較は、評価の基準がブレる印象を与え、マイナスに働くこともあります。
× 理由や根拠がない
ただ漠然と「もう少し上げてほしい」と言っても、何をもってそう思うのかが伝わらなければ、説得力がありません。
数字や具体例を添えて伝えることが大切です。
まとめ
いかがでしょうか?
在宅ワークでは、自分のスキルや姿勢次第で、キャリアも報酬も築いていける可能性があります。
だからこそ、自分自身の価値を適切に伝える力も必要になってきます。
とはいえ、交渉の第一歩はとても勇気がいりますよね。
多くの方が「自信がない」「タイミングがわからない」と感じていることからも、その気持ちは決して特別ではありません。
しかし、自身の価値を上げていくためには、自分の働きを客観的に振り返り、準備をし、適切なタイミングを見つけて、自信を持って交渉に臨んでみる経験が不可欠です。
報酬交渉は決して「わがまま」ではなく、「適正な評価を求める行動」です。
最初は緊張するかもしれませんが、説得力のある根拠をもとに誠意を込めて伝えることで、納得のいく関係性を築くことができます。

